一人ひとりのエンジンに「挑戦」を点火する

Client 日本特殊陶業 モビリティビジネスカンパニー様
Overview
自動車部品のスパークプラグで世界トップシェアを誇る日本特殊陶業。
同社のモビリティビジネスカンパニー(以下、MBC)では、自律創造人財を方針に掲げ、自動車業界の常識にとらわれずに新しい挑戦に取り組んでいます。その挑戦に向けたMBCの人事の取り組みについて、NOLKAの支援内容と共にお話しを伺いました。
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岡本 雅人 氏
モビリティビジネスカンパニー
事業管理部 部長
(写真: 左) -
加藤章子 氏
モビリティビジネスカンパニー
人事総務課
(写真: 左2番目) -
早藤まゆみ 氏
モビリティビジネスカンパニー
人事総務課
(写真: 中央左) -
卯野芹奈 氏
モビリティビジネスカンパニー
人事総務課
(写真: 中央右) -
廣澤順一 氏
モビリティビジネスカンパニー
人事総務課 主管
(写真: 右2番目) -
梶田隆司 氏
モビリティビジネスカンパニー
人事総務課 課長
(写真: 右)
目指すは「自律創造人財」
人事総務課の役割は、MBCメンバー一人ひとりの成長支援を通じて組織全体の活性化と一体感を醸成し、会社が目指す「自律創造人財」の育成を支えることです。そのため、単なるスキルや知識の提供にとどまらず、メンバーが自ら考え、自律的に行動できるためのサポートを積極的に行い、互いに成長を刺激し合う風土を築くことを目標としています。
また、メンバーが目標に向かって意欲的に取り組むための環境づくりにも注力しています。柔軟かつ多様なキャリア支援や、メンバー間の信頼関係を深める仕組みを整備することで、一人ひとりの成長が組織全体の力に繋がることを目指しております。
私たちの取り組みは、MBCメンバーの主体性や創造性を引き出し、変化の激しいビジネス環境に適応できる個人と、変わらなければいけない組織作りの一端を担っています。

カンパニー内の人事方針に「根拠」が欲しかった
これまで人事総務課では、方針立案の際に「なんとなく問題がある」「こうしたい」といった漠然とした考えで、課長一人が単独で方針を策定するケースが多く見られました。そうした立案プロセスでは、組織として目指すべき理想像や戦略的な目標が明確に設定されていないだけでなく、現場の声や周囲の意見が十分に反映されていないことも大きな課題でした。そのため、方針が実際の組織ニーズや社員の成長をサポートするための施策に結びつかず、組織全体の一体感や実効性に欠けるのではないか。と懸念していました。
また、施策が実行された後でも、その施策がどのように組織の目標やビジョンに貢献するのかを十分に示せていなかったことから、社員一人ひとりの意識と行動が組織の長期的な目的に一致しているかどうかを判断することが難しい状況にありました。
特に、MBCメンバーが組織の目指す姿に向けて具体的な成長を遂げるためには、より明確な方針や共通のビジョンが必要であり、こうした一貫性のある目標設定と協力体制の構築が急務でした。
このような問題の背景には、複雑化する組織環境の中で、組織全体が目指すべき方向性を共有し、具体的な行動に結びつけるための戦略的なアプローチが十分に整備されていなかったことが挙げられます。人事総務課として、組織のビジョンを実現するための支援や、MBCの社員が自律創造人財という方針に向かって主体的に成長できる環境を築くことが、今後の大きな課題となっていました。

「納得感のある方針」が、人を動かす
こうした状況を変えるため、私たちはNOLKAの協力を得て、徹底的に目指すべき人財像やその詳細、目的、行動指針について深堀し、新しい課方針、そしてキャッチ―な目指す姿を策定しました。この過程で自分たちが納得するためには「ここまで深堀しなければならないのか」が気づかされました。完成した方針は非常に納得感のあるものに仕上がり、今期はメンバー一人ひとりが目標達成に向けて着実に進められています。
現在、MBCでは新入社員、キャリア入社者、社内異動者を対象にオンボーディングを実施しています。また、会社と従業員のエンゲージメント向上を目的に、メンバーとトップをつなぐ「カンパニー長インタビュー」の配信も行ってきました。これまでは、キャリア入社者や異動者がMBCに加わっても、配属部署以外のメンバーには認知されず孤立しがちでした。そのため、受け入れられた側はつらい思いをしていたと、今回の取り組みを通じ、人事として実感しました。このオンボーディングによって、メンバー全体が新たな入社者をより意識的に受け入れられるようになり、歓迎の姿勢が整いつつあります。
また、MBCでは5年前から、メンバーの成長やキャリア支援を目的として上司と部下のコミュニケーションを活性化する1on1の取り組みを行っています。特に1on1の実施に向け、上司側のスキル向上が必要であると考え、全基幹職を対象に1on1研修を進めてきました。しかし1on1もマンネリ化し形骸化している課題が浮上しており、マネジメントの一環としての1on1の意義を再認識してもらうため、プログラムをリニューアルしました。
これらの取り組みによって、上司と部下の信頼関係が深まり、メンバーが目標達成に向けて自信をもって進むことができる環境を継続的に整えております。

その他、今期はスタッフ職についての取り組みも行いました。
具体的には、スタッフ職の役割を再認識し、「現場の鍵を握る人財」として活躍してもらうことが、今回のプロジェクトの背景にあります。特に、主任・担当職については、新規事業の創出に注力できる時間を確保する必要があり、負担軽減を図りたい状況です。しかし、近年中堅層の社外流動性が高まり、欠員時に業務負荷が増える課題があります。この課題を解決するためには、主任・担当職の一部業務をスタッフ職に移管し、役割分担を見直すことが不可欠です。
しかし、スタッフ職は入社時や3年目の研修以降、階層別研修の機会が少なく、会社が求める役割について考える機会も十分ではありませんでした。そのため、他職位の業務を担当することに対して抵抗感が強い実状があります。この状況を改善し、スタッフ職に「現場の鍵を握る人財」としての自覚を持ってもらうため、まずは1年をかけて役割の再認知とマインドセットの変革を促す支援を開始しました。
Niterraグループが掲げる「自律創造人財」の実現に向けて、スタッフ職には「自ら考えて行動する人財」への成長を期待しています。今回のプロジェクトの目的は、スタッフ職が他職位と同様に「自律創造人財」としての役割を果たし、3年後には自ら会社の課題や自身の業務課題を解決するために自主的に行動できる「自律自走」の姿勢を習慣化することにあります。
初年度は「成長型マインドセット」への意識変容を目指し、期初の集合型研修にて今期の目標を設定しました。以降、2~3か月間隔で実施する「共有会」を通じて、メンバーが目標に対する進捗や課題を意識し、他者からのフィードバックを受けて新たな気づきを得る機会を提供しています。これにより、単なる業務遂行に留まらず、「実施→報告→実施→報告…」というサイクルを繰り返し行うことで、自分への気づき、主体的に考え行動するきっかけを提供しています。

アウトプットの一例を表示

9割以上の社員が「挑戦してみたい」
オーンボーディングの取り組みでの成果はやはり、対象者の声ですかね。「中々、職場のメンバーは忙しくて業務以外のことや職場環境の相談や悩みを打ち明けることができませんでしたが、話せる場があると本当に助かります。」と言った声や、「1年間フォロー面談をやってほしい。」なんて言う声も聞き、人事総務課メンバーは手ごたえというか、やってよかった!!と皆そう感じています。
カンパニー長インタビューでは、「挑戦に対する心理的ハードルを下げる。」ということを目的に置き、結果として、MBCの9割以上が挑戦に対して前向きなマインドを持つことができました。また、スタッフ職や担当職の若手など、普段カンパニー長から距離の遠いメンバーのマインドの変化が大きかったこと。信頼度が向上した = 全体底上げの効果を感じています。
そもそも「カンパニー長の顔を初めてみた。」という意見もあり、これまでそんな状態だったんだなと驚きました。
今期の目標である「役割の再認知」に向けて、スタッフ職の役割に関する説明を期初の集合型研修で実施しました。その結果、スタッフ職メンバーのおよそ80%が「自身の役割が明確になった」と回答し、うち20%が「非常に明確になった」、60%が「ある程度明確になった」と回答しました。この研修では、スタッフ職が単に従来通りの仕事をこなすだけでなく、環境変化や担当業務の変化も柔軟に受け入れる重要性を再認識させることができ、スタッフ職メンバーがより積極的に自己の役割を理解する姿勢が促されました。
また、スタッフ職同士のつながりを深めるため、メンバーの意見を反映し、「キャリアデザイン研修」や「共有会」を通じて、横のつながり(スタッフ職同士)を意識した交流の場を設けました。特に「共有会」ではカメラON、小グループでのディスカッション時間を多く取り入れるなど、対面とリモートを効果的に活用した形式で実施。各施策後のアンケートでは、「自分にはない視点を得て、新たな気づきがあった。」「他のメンバーから影響を受け、自分も挑戦してみたい。」といった前向きな回答が多く寄せられ、スタッフ職メンバーが積極的に「自ら考えて行動する。」意識が高まっています。
これにより、スタッフ職のメンバーが互いに刺激し合い、自らの役割を再認識するだけでなく、成長意欲や目標達成への姿勢をより強固にするきっかけとなりました。
人事総務課にとって、これら施策はすべて初めての取り組みであり、不安を抱えながらのスタートでした。しかし、「新しいでちょっと前へ」という課方針のキャッチフレーズを掲げ、まずは私たち自身が率先して実行する姿勢を持つことが重要であると考え、全力で取り組みました。メンバー一人ひとりが積極的に新しい挑戦に取り組む姿勢には、尊敬と感謝の気持ちを感じています。

ずっと「成長し続けられる」職場へ
スタッフ職人財育成については、「現場の鍵を握る人財」として、業務範疇の拡大と生産性向上、スタッフ職がもっと活躍できるようにマインドの醸成や成長のための教育支援を行い、「MBCに在籍する個人のキャリア形成」と「個人の成長を通じた組織の成長」に寄与できる人財育成を進めたいと考えています。
今回、1on1研修をリニューアルして気づいたのですが、基幹職のマネジメント能力を上げていきたいと考えています。現場では、プレイングマネージャーが求められている風土がありますが、正直、管理とプレイング(実務)によって、マネージャ層はパンクしているように感じています。そこには、本来あるべきマネジャーの役割を改めて理解する必要性と、どうしたらプレイングではないマネジメント(仕事の管理や改善、部下育成)を実践に近い形で学べるかが今後の課題だと考えています。
また、世代間の価値観ギャップに悩んでいる方も多くいらっしゃると思っています。今の若手は、優秀で自分たちと育ってきた環境が大きく異なります。その部下に対して、日々の接し方や業務改善、成長を目的にしたフィードバックに悩んでいるように感じます。実際に、ハラスメントとの境界線が分からず、ダメなことはダメと伝えることや、アドバイスが必要な場面でも、言いたいことを押し殺しているマネージャーが多いのではないでしょうか。その結果、アウトプットの質が落ち、組織にとってマイナスになってるような気がします。
簡単に言えば、コミュニケーションや部下へのフィードバックをより現代に合わせた形へ改善できると思っています。
部下側は“コストパフォーマンス”とか、”無駄だ”と自身の価値観で判断している気もします。
お話したように、上司はかなり気を使って(使いすぎ)マネジメントしているのに対して、部下側はどちらかというと自分勝手に仕事を進めている部分があり、部下側に対しても上司世代の価値観や仕事の進め方に向き合うことも重要になってくる。そのように感じています。部下側にも何か取り組みをしていきたいと考えています。
色々とお話しましたが、会社の求める自律創造人財に対して、資格基準に沿った能力要件を明らかにし、継続的に成長を促す育成プログラムがカンパニー内で確立されていないと感じています。研修は一次的にやる気やモチベーションを上げる効果はありますが、持続性に乏しいため、MBCの現状にあった、イマドキの育成プログラムを模索・確立し実行していきたいと考えています。
その他には、人事窓口支援の構築として、一人ひとりが自らのキャリアや目標に自信を持って取り組むことや、メンタルヘルスを維持しながら働くことができれば、組織の活性化や生産性向上にもつながります。
つまり、「やさしさがめぐる人事窓口支援」を理想としています。
その為にも、私たちは、一人ひとりのニーズや状況・状態に合わせ、柔軟な支援体制を整えることで、メンバーのエンゲージメント向上やMBCへの信頼感が高まると考えています。
MBCメンバーが仕事上での問題について、安心して声を上げられる場を提供し、その意見を受け入れ、解決・改善に努めることで、安心で安全な環境を作る。この環境により、メンバーが人間関係の悩みにとらわれることなく仕事に集中でき、生産性を向上し、個人と組織の成長と、メンバーが仕事に誇りとやりがいを持ちいきいきと働ける職場をつくっていくことを目指していきたいです。

Profile 企業プロフィール
Niterraグループ 日本特殊陶業株式会社様
自動車部品、半導体関連部品、医療機器、産業用セラミック部品などの幅広い分野で利用される製品・サービスを提供し、より良い社会の実現に向けた事業を展開しています。
創立 | 1936年(昭和11年)10月26日 |
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事業内容 | (1)スパークプラグおよび内燃機関用関連品の製造、販売 (2)ニューセラミックおよびその応用商品の製造、販売、その他 |
売上高 | 6,144億円(2024年3月期) |
従業員数 | 単独:3,622名(2024年3月期) 連結:15,980名(2024年3月期) |
Client 日本特殊陶業 モビリティビジネスカンパニー様
一人ひとりのエンジンに「挑戦」を点火する